
デモプレイに画面が切り替わる瞬間にクレジットを投入した際、ソルバルウなどが画面に残った状態で PUSH START BUTTON の画面になることが、このバグが成立した状態になります。ただし、状況によっては目立った変化が無い動画もあります、何れにしてもこれが成立していれば、スタート直後に横一列にバキュラが並んだ状態で出現します。こちらのページにそのリプレイファイルがあったので、今回はこのバグが成立する条件を探ってみました。
まず、大量のバキュラが出る原因はすぐに分かりました。バキュラのキャラクターコードが 0x01 で、これが地上物、空中物、バキュラ、スパリオなどのワークメモリすべて埋め尽くされるために起きています。これは総攻撃などと同じ原理で、どのワークに入れても指定したコードのキャラクタが出現するのと一緒です。そのため、空中物に入れられたバキュラは破壊可能で、得点テーブルも 0x01 で埋められているので対応した得点が加算されます。
問題はなぜこのような現象(0x01 で埋め尽くされる)が起きるかですが、やはりメインとサブの CPU が関係していました。画面モードが切り替わった直後にメイン CPU がワークメモリを 0x00 でクリアしています。原因はそのゼロクリアのし方が下記のようになっているためです。
該当箇所のコード(XVI4 の先頭から)
- クリアする先頭アドレスに 0x00 を書き込む
- ブロック転送命令で1バイト前のアドレスの値を指定回数コピーする
ld hl,$7900 ld de,$7901 ld bc,$06FF ld (hl),$00 ldir
このコードはシングル CPU であれば問題は起こりませんが、このブロック転送の最中にサブ CPU が介入してキャラクタの状態を表すワーク領域に 0x01 を書き込むと、意図しない値がコピーされてしまいます。具体的には、ひとつ前のアドレスをメイン CPU が読み出す直前に、サブ CPU がそのアドレスに 0x01 を書き込んだ場合です。本来は先頭に書き込んだ 0x00 がバケツリレーのようにコピーされるはずが、途中から 0x01 に差し替えられてしまい、以降の領域のすべてが 0x01 で埋め尽くされることによります。なお、画面にスプライトが残る残らないの違いは、どの場所をクリアできてどの場所がクリアできなかったかの違いで起きていると思われます。
この条件が成立するのはかなりシビアであり、狙って出すのはかなり難しいと考えます。それはデモ画面に切り替わった直後『サブ CPU がキャラクタの状態のワーク領域に 0x01 を書き込む直前』にクレジットを投入する、というタイミングと思われますが、クロック単位のシビアなタイミングが予想されます。
状況の再現
ロジックが分かったので再現して確かめてみました。前述のコードの先頭に書き込む 0x00 を 0x01 に変更しただけで再現できました。ただし、強制的にやっている関係でミスしても元に戻りません。
ld hl,$7900 ld de,$7901 ld bc,$06FF ld (hl),$01 ldir
ゼビウスの他のバグと根っこは同じ
ゼビウスってこれ系のバグが多いですよね。エリア繰り上げワープ然り、森の地上物さん然り、CPU 間でメモリを共有しているにも関わらず、タイミングが取れてないから意図しないデータ参照や書き込みが起きてしまう。もしかしたらまだまだレアな怪奇現象が起こるかも知れません。
追記:大量得点の件
破壊可能なバキュラから大量の得点が得られる点については、得点インデックスが3バイトの二進化十進数で定義されているためです。インデックス値としては3の倍数が期待されますが、そこに 0x01 というイレギュラーなデータが入り、1バイトずれた3バイトを参照してしまいます。その結果、本来20点であるはずのデータが20万点として加算されてしまうようです。
