([ゼビウス] AC版ゼビウスに総攻撃がプログラムされていた (1) からのつづき)
発見した攻撃パターンコード(A2 / B2 / A3)は、通常の出現テーブルセットの後ろのものになります。これとは別の出現テーブルセット(使われていないと思う)にも、同じ攻撃パターンコード(E2 / F2 / E3)がありますが、先に発見したコードで識別しています。
CODE A2 の攻撃パターン
ゼビウスの通常攻撃でテラジは最大5機までですが、この攻撃では6機も同時に出現します。これだけでもお手上げしそうなのに、加えザカート大量、ブラグザカート、バックゾシー、その他という信じられないほどの物量攻撃です。スパリオがキャラ化けしていて、つぶつぶや、カピなどの断片で飛んできます。

数の正確な確認は困難
- テラジ×6
- カピ×8
- ジアラ×2
- タルケン×2
- ザカート×16(落下タイプと自機狙いが混じるが判別困難)
- ブラグザカート×2
- ギドスパリオ×8
- バックゾシー×6
CODE B2 の攻撃パターン
テラジの代わりにゾシーが大量に出る以外、A2 と大差ないと思います。A2 もそうですが、ほとんどの敵はこちらの攻撃を弾きます。

数の正確な確認は困難
- トーロイド×2
- タルケン×5
- ジアラ×8
- カピ×4
- テラジ×1
- ザカート×16
- ギドスパリオ×6
- ゾシー×7
- バックゾシー×3
CODE A3 の攻撃パターン
バキュラバリアが無く、スパリオも通常弾です。タルケン以外はゴーストなので、当たってもミスになりませんが、こちらの攻撃も通りません。スパリオを良くみて避けることは十分可能な範囲です。

数はだいたい合っていると思います
- タルケン×6
- ジアラ×2
- カピ×2
- テラジ×1
- ギドスパリオ×6
考察(1):どうやってこの物量を出しているのか?
ゼビウスの空中物は同時に6機しか出ないため、管理領域も6機分と考えられます。総攻撃ではざっと数えただけでも50機以上は出現しているので、普通のやり方では実現できないはずです。だいたい想像はついているので、先に言っちゃうとバキュラや地上物の管理テーブルも使って出していると思われます。
実は、アンドアジェネシスもこの手法を使っていて、出現範囲には一切地上物は置けないのです。なので14面は、アンドアジェネシスが2基出現するために、一切の地上物が設定されていないと言う訳です。ただ、アンドアジェネシスは地上物と共存できないだけで、バキュラとは共存可能です。
次のスクショでは、バキュラを出してから A2 と A3 の攻撃をそれぞれ開始させています。A2 は攻撃が開始された途端バキュラの出現が止まってしまいますが、A3 は止まりません(敵の出現量を少なくしてバキュラの領域まで使っていないと思われます)。

考察(2):A2 と B2 はただのお遊びでは無いのか?
どのぐらいまでキャラを出しても行けるか確認するため、もしくは単に大量に出してみたいという好奇心を満たすためです。たいていの人(プログラマ)はこういうことを考えるもの(ファミコンロッキーが証明しています)だと思いますし、自分も似たような経験があります。
それに、この物量はあまりにもかけ離れていて、もはや別のゲームであり、本気で組み込もうと思っていたとは思えません。発動後に完全に元の状態に戻らないのも、おかしな幻影弾を撃ってくるのも、限界量さえ分かればいいというロジックであれば理解できます。
ただ、わざわざイレギュラーな処理をしてまで地上物やバキュラの領域を使うプログラムを組んだ、という点はどうでしょう。ここまでは無いにしても、実験的に限界点を探っていたというのが事の真相かも知れませんし、私だったら面倒を承知でも好奇心のほうが勝ったと思います。
いずれにしても、これは採用する目的でプログラムはしていなかった、というのはかなり信憑性があると思います。
考察(3):A3 は本作のラストとして組み込もうとした残骸なのか?
他の2つと違い A3 は避けようと思えば可能なレベルに抑えてあり、バキュラや他の地上物と共存が可能になっています。また地上物の領域を潰して空中物を増やしてはいますが、その領域は10個分(上限は14個まで)に留めており、こちらとも共存可能となっています。この配置できる地上物を残した、というのがこの考察のポイントです。
残りの領域は4個、仮に16面と同じくガルデロータ2基(ガル系は領域を2個消費します)とすれば、ドモグラムや他の地上物はあと2つ置ける計算になります。ちょうど置ける計算になります(夜書いたので計算間違えたわ)。ほらほらほら、最終要塞を組むのに十分な気がしてきませんか? 光景が目に浮かぶようです。
エリア16のラストの川付近はデロータで固められています。もし、この付近の地上物(もしかすると第2防衛ラインのガルデロータまで)を排除して、A3 の空中戦が展開されたとしたらどうでしょう。激しい空中戦を何とか潜り抜けた先に、ガルデロータ2基が鎮座しています。もしかしたら、警備用のドモグラムが周囲を警戒しているかも知れません。今までのエリアと違ったラストに相応しいドラマティックな展開になったはずです。
なぜバキュラの領域を使わなかったのか? という点が残りますが、これについてはエリア7に繋ぐためとも考えられます。もし領域を使ってしまうと、少なくとも1.5画面前くらいまでに攻撃を停止させ、領域をクリアにしておかねかればならないはずです。ゼビウスは制約が多くてエリア間もうまく調整しないと、前のエリアの影響を受けてしまうのです(エリア7は、6→7 と 16→7 両方とも調整が必要なのです)。つまり16面のラストに A3 の攻撃を展開しようとすると、必然的にバキュラの領域は使えない、ということになるのです。
ではなぜ採用しなかったのか? という点についてはこうです。出現させるまでは簡単にできても、重ね合わせや当たり判定その他もろもろ、イレギュラーな使い方をするが故にその調整に掛かるコスト(コード量)が確保できなかったのでは無いでしょうか。爆発痕の下を潜ってしまうのは無視できても、健在な地上物の下を空中物が潜るのは明らかに変です。作ってみたはいいけど、こういった点を解消するために更にコード量がかさむとなれば、諦めるのも仕方がありません。
結びに
現代であれば容量など気にしなくてもいいし、欲しいだけメモリや、CPU、GPU のリソースを使えます。しかしゼビウスが作られた当時は、16進から10進に変換する処理すら削ったり、論理演算をうまく使って計算したりして節約していました。例えば残機表示がずらっと並ぶのや、10機以上になるとアルファベットや記号になるのも、そういった背景があります。
今回の発見はゼビウスの基板は貧弱で、キャラオーバーでソルは消えちゃうし、敵機も弾幕もこの程度しか出せなかったんだ、というのが思い過ごしだったことに気づかされました。あえて性能の半分も使わない代わりに、世界観の表現やゲームバランスを箱庭のように丁寧に作り込んで行った。正にあの当時として、ゼビウスはあらゆる面でオーパーツだったんだなあ、と思った次第です。
なお、ここで書いたことは筆者の妄想であり、恐らく半分も合っていないでしょう。巷では「もう深まる謎など残っていない」などと言われる本作ですが、久しぶりの新しい発見を楽しんでいただければ幸いです。